江戸川乱歩賞、第31回受賞作、『放課後』







第19回受賞作、『アルキメデスが手を汚さない』が、
大ヒットを記録して以降、青春ミステリという、一つの分野が認知されていった。


その系譜を受け継ぐ作品として、昭和60年、
第31回受賞作に輝いたのが、東野圭吾作、『放課後』である。


本人が大学時代所属していた、アーチェリー部の経験を存分に生かし、
アーチェリーの練習をしながら、主人公が犯人の動機に迫っていく、
一連の文章の流れは、乱歩賞受賞作の中でも、屈指の名シーンとなっている。


女子校で、生徒指導の教師が、校内の更衣室で、
青酸中毒で、死亡しているのが発見される。


若い男性教師は、否応なく、事件に巻き込まれるが、
2人だけの旅行に誘う問題児や、頭脳明晰の剣道部主将、
アーチェリー部の主将に、ナンパされるなど、
次々と登場する犯人候補に、振り回されてしまう。


そして、運動会の仮装行列で、第2の殺人が起こる。


犯人の動機は何か。
若い男性教師が辿りついた真相とは――。


受賞時には、青春ミステリとしての完成度の高さに、
評価が与えられた一方、主人公の魅力の問題や、
ラストシーンの後味の悪さが、批判の対象となった。


しかし、今日では、これらの部分も、すんなりと受け入れられる土壌が、
社会的に出来ているようで、同様の批判は、あまり見られない。


それだけ、社会の歪みが大きいことの、証明でもある。


『放課後』に続き、


・『魔球』
・『卒業』
・『同級生』


など、青春ミステリを、多数発表していた東野圭吾だが、
『秘密』・『白夜行』などが、立て続けに映像化される中で、
ベストセラー作家への道を、駆け上がっていった。


現在では、作品を出せば、ヒット間違いなしの状態だが、
デビューからしばらくは、いくら内容が良くても、本が売れない、
「初版作家」として、不遇をかこっていた。


アメリカ探偵作家クラブ賞、最終候補にもなった、
『容疑者Xの献身』と、『放課後』のラストを読み比べてみれば、
作風の変化が、よく分かる。


作家も、常に成長を続けなければ、
人の心に響く作品は、生み出せないのだ。






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