江戸川乱歩賞、第19回受賞作、『アルキメデスは手を汚さない』







60回を超える歴史を持つ、”江戸川乱歩賞” だが、
最近は、ミステリーの新人賞が次々と生まれ、
受賞作の売れ行きも、出版不況の影響もあり、かんばしいものではない。


名作ぞろいの江戸川乱歩賞受賞作の中で、未だに、
ハードカバー版の、最高売れ行きを記録しているのが、
昭和48年・第19回受賞作の、小峰元作、
『アルキメデスは手を汚さない』である。


毎日新聞社に在籍し、当時、すでに少年向け小説を、
いくつも発表していた、小峰元が書いたこの作品は、
高校生の友情と反抗など、誰もが通る道を、活き活きと描いた、
青春推理小説として、爆発的なヒットを記録することとなった。


この作品に影響されて、作家を目指した人も多く、
後に、乱歩賞を受賞し、ベストセラー作家となる、
東野圭吾も、この作品に影響を受けたとインタビューで語っている。


「アルキメデス」という言葉を残し、一人の女子高生が自殺した。


盲腸手術の失敗が原因と、言われているが、
実は、妊娠していたというのが、もっぱらの噂。


次いで、クラスメートが弁当に入れられていた、
毒のせいで、殺されかかったかと思えば、
一見、関係のなさそうなサラリーマンが、死体で発見される。


行方不明者も出るなど、大混乱に陥る学園の中で、果たして犯人の動機は?
そして、女子高生を妊娠させた相手は、誰なのか――。


1970年代の高校を舞台にした、青春ミステリーなだけに、
現代の人が読むと、古臭く感じる部分も、少なからず存在する。


しかし、時代は変わっても、青春時代独特の透明さ、
若さゆえの思慮のなさといった、いつの世代も共通する思いが、
結実した作品だからこそ、青春ミステリーの枠を超えた作品として、
今も語り継がれているのだろう。






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