江戸川乱歩賞、第11回受賞作、『天使の傷痕』







「直木賞を受賞して、消えていった作家はたくさんいるが、
 乱歩賞を受賞して、消えた作家はいない」


と、言われるほど、これまで多くのベストセラー作家が、
世に出るきっかけとなった、”江戸川乱歩賞”。


昭和40年に、第11回乱歩賞を受賞したのは、
現在もトラベルミステリーを中心に、活躍を続けている、
西村京太郎の、『天使の傷痕』だった。


すでに、『四つの終止符』で、長編デビューを果たすなど、
作家としての道を歩んでいた、西村京太郎だったが、
当時、社会問題となっていた、”サリドマイド事件”から、
着想を得たと思われる本作品は、西村京太郎初期の、
社会派推理作品の中でも、根強い人気を誇っている。


デート中の新聞記者が、雑木林で殺人事件に遭遇した。
被害者は、息を引き取る際、「テン」という、謎の言葉を残す。


事件を目撃した新聞記者は、職業柄関心を持ち、
被害者の周辺を、洗っていく。


被害者が残した言葉の意味は、「天使」ということが判ったが、
事件の背後には、意外な真実が隠されていた――。


西村京太郎が、本格的なベストセラー作家になっていくのは、
乱歩賞受賞から13年後、『寝台特急殺人事件』が、
トラベルミステリーとして、爆発的なヒットを遂げてからの事である。


それまでは、社会派推理、ユーモア推理、パロディなど、
様々な推理小説を手掛け、乱歩賞受賞後でありながら、
自費出版で、作品を世に出さなくてはならない、時代もあった。


ベストセラー作家になってから、
西村京太郎の過去の作品を、読み直している内に、
初期作品のファンになった人も多い。


弱者に対する優しさに溢れ、差別に対する批判だけではなく、
被害者たちへの問題提起も含まれている、
この優れた社会派推理小説は、今日でも燦然と光り輝いている。






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