江戸川乱歩賞、第3回受賞作『猫は知っていた』







もともとは、探偵小説を奨励するために制定された、
文学賞であった江戸川乱歩賞が、第3回からは、
公募という形をとり、優秀作品に賞を与えることになった。


その記念すべき最初の受賞作が、
仁木悦子作、『猫は知っていた』である。


植物学専攻の兄と、音大生の妹が引っ越した先で起こる連続殺人。
現場に出没する黒猫は何かを見ている。


クセのある住人達を相手に、兄と妹の素人探偵が謎を解き明かす、
ユーモラスなこの作品は、大ヒットを遂げ、
映画化・テレビドラマ化されることとなった。


昭和32年の作品なので大学生、しかも、
兄と妹が一つ屋根の下に下宿するという設定が、時代を感じさせる。


言葉遣いや雰囲気がレトロな時代、古き良き時代を醸し出し、
時々分からない言葉があっても、今読んでも楽しめる作品だ。


病院を舞台にした、本格ミステリというのもミソで、
変に奇をてらった箇所もなく、昭和の良き探偵小説と言える。


昨今では、中々お目にかかることのできないタイプの作品と、
言えるだろう。


作者の仁木悦子は当時29歳。幼少のころの病気がもとで、
歩行困難な中、江戸川乱歩賞を受賞したことで、
「日本のアガサ・クリスティ」と称されることとなった。


もともと、児童文学から推理作家に転身したせいか、
明るいユーモラスな作風が特徴だ。


いつの世も、親しみやすさがヒットする作品に、
普遍的であることを示してくれる同作品は、
すべての小説家志望の人に手にとって、読んでもらいたい一冊である。






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