江戸川乱歩賞、第51回受賞作、『天使のナイフ』







小説に限らず、コンクールで、最終選考に残る作品というのは、
いずれも粒ぞろいであることが多いため、最終審査では、
選考員による、喧々諤々の議論が、繰り広げられることは珍しくない。


平行線を辿った末の、ダブル受賞といったケースもあり、
満場一致で選ばれることは、なかなかない。


そのため、刊行された受賞作の巻末に、
選考員の選評が掲載されていたが、
あまりに、否定的な意見だけが載せてあったため、
本の売れ行きに影響する、といった出来事があり、
一時期、掲載していなかったことさえある。(現在は復活)


そうした中、数少ない、満場一致で選ばれた作品の一つが、
平成17年・第51回江戸川乱歩賞を受賞した、
薬丸岳作、『天使のナイフ』である。


凶悪化の一途を辿る、少年犯罪を取り上げたこの作品は、
話題を呼び、後に、テレビドラマで連ドラ化されるなど、
根強い人気を誇っている。


保育園に通う娘と、穏やかに暮らしていた、
主人公の元に、突如警察が訪れた。


被害者は、かつて、主人公の妻を殺した、
未成年グループの一人だった。


主人公は、否が応でも、過去の事件に連れ戻され、
少年たちが、その後どのように暮らしてきたのか、調べ始める。


関係者たちを訪れ、話を聞いて回る、主人公が掴んだ驚愕の真相、
そして、今回の事件の犯人は――。


少年犯罪と、少年法に関する問題は、
解決すべき多くの課題をはらみながら、依然として、
進展の兆しすら見えてこないのが現状だ。


マスコミは、事件が起こったときだけ、センセーションに報道し、
その後のフォローまではしない。


被害者の名前と、顔写真は、執拗にさらけ出される一方、
加害者は、人権という高い壁に守られ、再犯に及ぶ者も少なくない。


いったい、法は誰を守るためにあるのか?


本作品の特徴は、そういった、普遍的な問題を投げかけると同時に、
加害者・被害者双方の視点が、絶妙に織り交じられている点に、新しさがある。


一小説に止まらず、少年事件の闇を理解する上で、
参考となる、好著と言えるだろう。